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ゼロ金利、量的緩和策に続いて、N銀はまたもや、C史上未曽有の新たな政策を打ち出したわけだ。
株買い入れ策は、非伝統的政策手段の一つとして課題になってはいた。
だが、今回の決定が、金融市場調節を検討する政策決定会合ではなく、通常決定会合で行われたことの意味は、「これは金融政策ではなく、信用秩序政策」という点にあった。 株買い入れの見返りに、市場に資金を供給するのが目的ではなく、銀行の銀行保有株買い入れ行き詰まり状態の中で、N銀が打ち出した株買い入れ策は、大手銀行など十五行から直接保有株を時価で買い入れるもの。
政府の取得機構のように銀行からの資金拠出を求めず、N銀資金による完全買い入れ方式とした。 買い入れ対象株は各行の中核的自己資本を上回る部分に限定し、格付BBB以上の上場株式、買い入れ額は当初一兆円(その後三兆円)。
買い入れ期間は一年(その後一年延長)。 N銀は買い入れた株を長期保有し、原則として議決権は行使しないなどのルールを定めた。
N銀マンは「清水の舞台から飛び降りる決意でまとめた」「いや清水よりもっと高いところからだ」と、〃思い切った決断〃を強調した。 で売れば、需給悪化を深めて株価下落が加速する。
銀行の保有株処理を促すため、政府は二月に、「銀行等保有株式取得機構」を始動させていた。 同機構が市場外で銀行から保有株を買うことで株価に影響を与えず、銀行の保有株減らしに役立てる狙いだった。
ところが、銀行が売却額の八%を機構に拠出する仕組みとしたことから、売却株は銀行のバランスシートからは完全に切り離せないことになり、銀行の利用は極めて限られていた。 保有株リスクを減らすことが目的というわけだ。
従って、政策委主導ではなく、N銀の担当部局が立案し、政策委の了承を得る形をとった。 この施策をまとめたのは、信用秩序担当理事のM、考査局長のI、同局参事役のA、信用機構室審議役のTら。
株安に歯止めが効かなくなった九月に入って、にわかにN銀が対症療法的に施策を捻り出したわけではなかった。 六月の時点で企画畑のIとAが考査局に人事異動で移っていたことからも、用意周到の施策だったことが類推できる。
二人の年次は五年違いで、ともに金融政策の企画立案を担当してきた各同期のエース格と目されてきた。 当初、この時にIらを考査局に配置する人事は、一○○三年春に迫っていたペイオフ全面解禁に向けた体制整備や、銀行財務を巡る金融庁検査とN銀考査の運営上の厳格化を進めるためと対外的には説明されていた。
「次は構造改革、中でも銀行の不良債権処理」と言い続けてきたH以下の執行部。 その意向を受けて、信用秩序分野にも強いMをトップに、N銀の各期のエース格と、金融システム問題の専門家のTらで極秘チームを組み、案をまとめたわけだ。
ある関係者は「問題意識は株価下落が進んだ年初からあった」と打ち明ける。 明確な執行部主導だった。
同施策が公表されると、内外から賛否両論が寄せられた。 N銀OBからも英断との称賛のほか、「中央銀行の使命逸脱だ。
言語道断」との厳しい批判も殺到した。 担当者は、「どちらかというと批判のほうが多かった」という。
政策委はどうか。 事後了承の形で執行部案を受け入れたが、公表された九月十七、十八両日の通常会合の議事録を読むと、施策の評価を巡って、かなり激しいやりとりがみられる。
議論の焦点は、政府が同議事録は、政策決定会合の議事要旨とは異なり、会合でのやりとり全体を載せている。 ただし、個別銀行名など、公表して差し障りのある部分は黒塗りで読めない。
その意味では、議事録や会見要旨などが、公表前に加筆修正を加えられていることを思えば、この時の議事録はなま黒塗り部分を除けば、かなり生の声に近いやりとりが行間から伺える。 十七日の議事録がA4用紙で二十三枚、十八日分が同十二枚。
明らかに論議は議決した十八日ではなく、十七日に集中している。
H以下の執行部三委員は、当然のことながら施策推進の立場だ。
▼H「今回の施策は不良債権処理も含め何か動き出すきっかけにしたいということもある」
「全体を動かす一つのきっかけにしたい」
Hは盛んに、きっかけ論を強調している。 政府との間で鯵着状態化している公的資本再注入論議、遅々として進まない銀行の不良債権処理。
自らの任期が半年後に迫る中で、何とか事態を打開したいとの思いが伝わってくる。 だが、審議委員の大半は、突然のN銀の「決意」に疑念を示した。
特に、十分に機能してはいないとは言え、政府が同じ趣旨で銀行の保有株リスクを減らすために銀行等保有株取得機構をスタートさせていることとの関係だった。 制度として屋上屋を重ねるだけではないかとの思い。
▼N「不良債権処理の中でN銀に何が出来るのかと考えた場合、この施策は一つの案としてあすでに設けている銀行等保有株取得機構との関係と、果たしてN銀独自の制度が機能するのか」という点だった。
▼S「株式取得機構との関係を整理して、株価維持対策でも流動性供給手段でもないことを強調したうえで、期限付きで行うのであれば、この施策を積極的にやっていって頂きたいと思う」
▼T「単独で進めていくことは極力避けるべきだと思う。
ただ、周囲が動かない場合は致し方ななぜ、N銀執行部は政府がほぼ半年前に作り上げた株式取得機構と別制度を立案したのか。 実は、捨て身のようなN銀の決意の背景に、N銀的な保身の計算も働いていたようだ。に読める。 つまり、金融庁との一体的な取り組みの中で、我々の考え方を示していくべきだと思う」
▼U「他は動かないでN銀だけ今回の施策を行うはめになるかもしれない。 これを避けるためには、(政府との間で)粘り強い交渉をする必要がある」
Fだけが異なった発言を残している。
「執行部からN銀独自の施策が出てきた時にはある意味感動した。 次に、そのアイデアが株購入であると聞いてびっくりしたが、詳しく聞いてみると、安全弁まで考えてよく出来ている」。
執行部施策への手放しの礼賛だ。 Yは施策作りに実質的に関係してきたことから、制度自体への評価は示していない。
各審議委員が示す疑念に対して答える役割に専念したようは大きい。
不良債権処理について金融庁とN銀が合同で対策を打ち出す方が、政府の取得機構構想が浮上した二○○一年春の段階では、株買い上げ資金にN銀融資を当て込む考えも出ていた。 N銀は、これを嫌い、懸命に同構想から距離を取る一方、身をかわすように量的緩和策へ転換する踏ん切りをつけた。
しかし、発足した取得機構は、先に見たように公的資金負担を極力抑えるために、銀行からの八%資金拠出条項を設けたことで、銀行にとっては使い勝手の悪い制度となってしまった。 第一回の買い取り額が千三百一億円だった後は、ほとんど開店休業状態が続いていた。
確かにN銀が取得機構に当初から組み込まれていると、政府は、N銀資金に依存した制度に仕上げた可能性がある。 N銀の「捨て身」の提案は、結局、取得機構の使い勝手の悪さをも表面化させ、二○○三年九月には、ようやく機構の八%条項も撤廃されるなどの改善につながっていく。
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議論の焦点は、政府が同議事録は、政策決定会合の議事要旨とは異なり、会合でのやりとり全体を載せている。 ただし、個別銀行名など、公表して差し障りのある部分は黒塗りで読めない。
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明らかに論議は議決した十八日ではなく、十七日に集中している。
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